
一般社団法人国際メゾンディレクトゥール協会 代表理事の東城真利子です。
「クリエナージュ®は、カルトナージュとは違うのですか?」そんなご質問をいただくことがあります。
クリエナージュ®は、カルトナージュから生まれたブランドです。けれど、私が目指したのは、単にカルトナージュを学ぶことではありませんでした。
「もっと簡単に。」
「もっときれいに。」
「もっと自分らしく。」
そして、「もっと暮らしの中で使えるものを。」
そんな想いから、技術やカリキュラムを一つひとつ見直し、長い年月をかけて生まれたのが、クリエナージュ®です。ここでは、その原点をお話ししたいと思います。
はじまりは、「自分の家を好きな空間にしたい」という想いでした
私が最初にカルトナージュを学び始めたきっかけは、とてもシンプルでした。
自宅のインテリアを、自分の好きなものに囲まれた空間にしたかったからです。
通っていた教室では、厚紙に線を引き、カットするところから丁寧に教えていただきました。
一方で、作品づくりは先生の見本をそのまま再現することが中心でした。
もちろん、そのおかげで基礎技術は身につきました。
けれど続けていくうちに、少しずつ思うようになったのです。
「自分の家にぴったり合うサイズで作れたら。」
「もっと自分らしいデザインで作れたら。」
収納する場所も、使う人も、それぞれ違います。
だからこそ、見本と同じ作品を作るだけではなく、自分で考え、自分の暮らしに合わせてデザインできるようになりたいと思うようになりました。
その想いが、クリエナージュ®の原点です。
壁紙との出会いが、発想を大きく変えました
その後、大阪へ引っ越したとき、生徒さんから「素敵な壁紙屋さんがありますよ。」と教えていただきました。
何気ないきっかけでしたが、その出会いが私の考え方を大きく変えることになります。
お店に並んでいたのは、布のような質感や美しいデザインの壁紙ばかり。
「壁紙って、こんなに素敵なんだ。」そう思いました。
それまで壁紙は、作品の内側に使うものというイメージがありました。
けれど、その壁紙を見た瞬間、「これなら、表にも使える。」そう感じたのです。
そこから、作品づくりが大きく変わっていきました。
壁紙を使うことで、インテリアとして空間に馴染む作品が作れる。
布にはない質感やデザインも楽しめる。
そして、「収納」と「インテリア」をもっと自由に考えられるようになりました。
クリエナージュ®が壁紙を積極的に取り入れている理由は、ここにあります。
「もっと簡単に、もっと美しく」を追求しました
壁紙を使うようになると、それまで当たり前だと思っていた作り方にも疑問を持つようになりました。
「この工程は、本当に必要なのだろうか。」
そんなことを何度も考えながら、作品を作り続けました。
試作を繰り返す中で気づいたのは、今まで当たり前だった工程の中には、省略できるものもあるということでした。
製図をしなくても、美しく作れる方法。
細かな計算をしなくても、きれいに仕上がる法則。
時間をかけなくても、美しい作品が完成する工夫。
一つひとつを検証しながら、自分なりの理論を組み立てていきました。
だからクリエナージュ®では、「簡単だから技術がいらない」のではありません。
むしろ逆です。
どうすれば、誰でも美しく仕上げられるのか。
そのために必要な理論を、一つひとつ積み重ねています。
私自身、この方法にたどり着くまでには、本当に長い時間がかかりました。
教えながら何度も見直し、改良を重ね、ようやく現在のカリキュラムへとたどり着いたのです。
道具にも、理由があります
作品づくりを続ける中で、もう一つ気づいたことがありました。
それは、作品の仕上がりは技術だけではなく、「道具」によっても大きく変わるということです。
例えばカッターひとつでも、切りやすさや断面の美しさは大きく変わります。
両面テープも同じです。
貼った直後は違いが分からなくても、時間が経つにつれて劣化しやすいものもあれば、美しい状態を長く保てるものもあります。
だからクリエナージュ®では、作品づくりに適した道具もお伝えしています。
特別な専用品を購入していただくことが目的ではありません。
ホームセンターやインターネットで誰でも購入できるものの中から、本当に使いやすいものをご紹介しています。
一方で、100円ショップの商品でも十分に使えるものもあります。
大切なのは、高価な道具を揃えることではなく、それぞれの道具の特徴を知り、目的に合わせて選べることだと考えています。
なぜ、カリキュラムは12作品なのか
クリエナージュ®のカリキュラムは、12作品です。以前は16作品で構成していました。
しかし、教え続ける中で、「この作品は応用で作れる」「この技術は他の作品で十分身につく」と感じるものがありました。
そこで、一つひとつ見直し、本当に必要な技術だけを残した結果、現在の12作品になりました。
もちろん、作品数を減らすことが目的ではありません。
私が大切にしたかったのは、「ここまで学べば、自分で応用できる」という力を身につけることです。
サイズを変える。仕切りを付ける。蓋を変える。
基本となる考え方を理解すれば、一つの作品からさまざまな作品へ発展させることができます。
そのため、応用で制作できる内容は、あえてカリキュラムから外しました。
一方で、「もっと作ってみたい」という方のために、単発レッスンもご用意しています。
必要な技術はしっかり学び、その先は自分らしく広げていく。そんな学びを目指しています。
実用的であることを大切にしています
クリエナージュ®の作品は、どれも私自身が「家にあったらいいな」と思って作ってきたものです。
クリップボードやトレイ、ダストボックス、ティッシュケース、アルバム…。
どれも毎日の暮らしの中で使えるものばかりです。
もちろん、複雑な形の作品を作ることもできます。
ですが、私が目指したかったのは、「難しいものが作れること」ではありません。
毎日使うものを、自分の好きな生地や壁紙で、自分の暮らしに合わせて作れること。
そして、その作品がインテリアとして空間に自然に馴染むことです。
暮らしの中で使うたびに、「自分で作ってよかった」と思えること。
それが、クリエナージュ®の目指すものです。
「クリエナージュ®」という名前を付けた理由
しばらくの間は、「オリジナルのカルトナージュ」としてレッスンを行っていました。
けれど、技術を見直し、考え方を整理し、カリキュラムを磨き続けるうちに、従来のカルトナージュとは異なる学びになっていることを実感するようになりました。
壁紙という新しい素材を取り入れたこと。製図に頼らない考え方。暮らしに寄り添う実用性。
応用できる理論を重視したカリキュラム。どれも私自身が試行錯誤を重ねながら形にしてきたものです。
カルトナージュという伝統工芸を土台にしながらも、そこに積み重ねてきた独自の工夫や考え方に、きちんと名前をつけたいと思いました。
それが、「クリエナージュ®」という名前を付けた理由です。
趣味から、その先の仕事へ
クリエナージュ®は、ご自宅で楽しむ趣味としてだけではなく、販売や教室、お仕事にもつながる技術です。
実際に、IMDでは「オーダーメイドインテリア」として、企業様や店舗様のインテリア制作を手掛けてきました。
既製品では見つからないサイズ。
空間に合わせたデザイン。
お気に入りの生地や壁紙を使った、世界に一つだけのインテリア。
そんな作品をお届けしてきました。
また、ご自宅で使うために作った作品を見た方から、「作ってほしい」「教えてほしい」と声を掛けられ、販売や教室へとつながっていく方も少なくありません。
趣味として始めたものづくりが、誰かに喜ばれ、自分らしい働き方へとつながっていく。クリエナージュ®は、そのような可能性も大切にしています。
「好き」が、誰かの笑顔につながることも大切にしています
クリエナージュ®を通して目指しているのは、暮らしを豊かにすることだけではありません。
「好きなこと」が、誰かの笑顔や応援につながる仕組みも、大切にしたいと考えています。
2025年3月からは、小児がん支援活動の一環として、「ハートフルクリップボードプロジェクト」をスタートしました。
このプロジェクトでは、クリエナージュ®デザイナーが制作したクリップボードを病棟へお届けし、病気と向き合うお子さまや、そのご家族へ応援の気持ちを届けています。
また、プロジェクト専用キットは、ご購入いただくだけでも売上の一部が寄付につながる仕組みとなっています。
この取り組みを始めてから、生徒さんの言葉がとても印象に残っています。
「作ることは好き。でも販売するのは少しハードルが高いし、プレゼントする機会も意外と多くありません。でも、自分が作った作品が誰かの役に立ち、喜んでもらえることが本当に嬉しいです。」そんな声をいただき、多くのデザイナーの皆様が温かい気持ちで参加してくださいました。
ものづくりには、人の暮らしを彩る力があります。そして、人の心をつなぎ、誰かを応援する力もある。
クリエナージュ®では、そのような「好き」の可能性も大切に育んでいきたいと考えています。
詳しくは、「ハートフルクリップボードプロジェクト」のページでもご紹介しています。

暮らしをデザインするというこ
私が作りたかったのは、「箱を作る技術」ではありません。毎日の暮らしを、自分らしくデザインできる力です。
「あったらいいな」と思うものを、自分の手で作れること。
収納でありながら、インテリアとして空間を彩ること。
お気に入りに囲まれた暮らしが、毎日を少し豊かにしてくれること。
そして、その「好き」が趣味になり、仕事になり、ときには誰かを笑顔にしたり、応援する力になったりすること。
そんな循環を生み出せることこそが、クリエナージュ®の価値だと私は考えています。
クリエナージュ®は、単に作品を作るための技術ではありません。一人ひとりが自分の感性を大切にしながら、自分らしい暮らしを形にしていくための学びです。
そしてIMDが目指しているのは、作品を作れる人を育てることではありません。アールポーセ®で器やインテリア小物を彩り、クリエナージュ®で収納や空間を整え、自分らしい暮らしを提案できる人。
私たちは、そのような人を「メゾンディレクトゥール®︎」と呼んでいます。
クリエナージュ®も、その大切な一つの学びです。
これからも、「お気に入りを、形に。お気に入りを、仕事に。お気に入りを、もっと暮らしの中に。」という理念のもと、一人ひとりの「好き」が豊かな暮らしへとつながる学びを届けてまいります。


